現代の製鉄

 

現代文明になくてはならない鉄。

電車や飛行機、船舶や橋梁などから、ハサミやホッチキスの針に至るまで、身の回りには用途によってさまざまな加工を施された鉄製品があふれ、幅広く利用されており、私たちにとって「鉄のない生活」は考えられません。

 

原材料の多くは外国から調達

原料の鉄鉱石はオーストラリアやブラジル、インドから輸入。燃料となる石炭はオーストラリアやインドネシアなどから輸入。製鉄ではその他に石灰石などが必要となります。

鉄の種類(さまざまな鉄)

同じ「鉄」 と言っても実際には炭素をはじめとするいくつかの物質を加えて、さまざまな性質のものが作られ、それらの特性を活かした使い方がされています。

 

鋼(ハガネ)

例えば、炭素の含有量によって鉄の硬さが変わり、炭素の割合が約2%以下のものを「鋼(はがね)」とと言います。これが一般に言う「鉄」のことで、材料として使う場合は「鋼材」という言い方になります。

 

特殊鋼

また人工的に炭素以外の金属を“添加物”として加えて、強さや硬さ、しなやかさ、錆びにくさなどの性質を高めたものを「特殊鋼」と言います。その代表格がステンレス鋼。錆びにくい性質から電車の車両や水に関わる設備などに使われます。

 

非鉄紺属

鉄以外の金属をまとめて「非鉄金属」と呼んでいます。中でも、銅、鉛、亜鉛、スズ、アルミニウムなどは生産量が多く、電線をはじめ自動車や建設材料、機会、電子部品から鍋などにいたるまで、広く使われています。



日本の鉄生産量と品質

日本では1年間におよそ1億トン、世界で第3位の鉄鋼製品生産を誇り(2019年)、そのうち 4,000 万トン以上を世界各地へ輸出。 日本の鉄鋼製品は、強い、加工しやすい、精度が高い、われにくい、溶接しやすいなどととても高品質。 自動車に多く使われているうすくて強い「高張力鋼板=ハイテン」や、モーターの性能を左右する「電磁鋼鈑」を作る技術は世界をリードしています。 


CO2の排出量を減らす「水素還元製鉄」

こうして現代文明を支えている「製鉄」ですが、大量のコークス(石炭)を使っていることで、地球温暖化の大きな要因であるCO2の発生が避けられません。今日「脱炭素」意識が高まるにつれて、CO2排出量が実質ゼロとなる「グリーンスチール」を生産するために、開発が進められているのが「水素還元製鉄」という方法です。この方法ではコークスのかわりに水素を使って還元するため、CO2の発生を削減することが可能で、この技術は世界的にもまだ確立されていませんが、日本では世界に先駆けて、その実用化に取り組んでいます。

出典◆経済産業省 資源エネルギー庁/公式サイト


製鉄所内の仕事の流れ

現在、日本の製鉄所で広くおこなわれている製鉄方法は、鉄鉱石やコークス(石炭)を「高炉」とよばれる溶鉱炉に投入し、炉の中で鉄鉱石から鉄だけを取り出す(還元)と同時に、鉄鉱石を溶かす(溶解)工程を一貫しておこなう方法で、「高炉法」と呼ばれています。

1)高炉で銑鉄を作る

鉄鉱石や石炭がタンカーで運ばれてくる。

石炭は乾溜(高温で蒸し焼き)して、コークスにする。

高炉(溶鉱炉)に鉄鉱石やコークス、石灰石を一緒に入れて高温で燃やし、銑鉄を作る。炉の下方に向けて高温となり、底の出口付近では2200℃にもなり銑(ズク)ができる。

高炉の底の出口から流れ出た銑鉄は、そのまま製鋼工場に運ばれる。

2)転炉で銑鉄を鋼にする

銑鉄は炭素分を多く(45%)含んでいて、硬くもろいので、粘りのある強い鋼にするために転炉に入れる。転炉では鉄スクラップやフェロマンガン、フェロシリコンなどいろいろな副原料を入れ、高純度の酸素を吹き込んで、酸化によって炭素を除去し、銑鉄から鋼をつくる。


3)連続鋳造設備で半製品に

溶けた鋼(溶鋼)は大きな鋳型に連続して流し込まれ、冷却されて、大きな帯状の鋼片はガス切断機で切り分けられ「鋼片」という半製品になる。


4)圧延機で最終製品に

半製品は、それぞれの加熱炉で再加熱されてから圧延機にかけられて最終的な形に整えられ、鋼材となる。

鋼材を作る主な方法は、上下をロールに挟んで押し延ばす「圧延」。

 ●線材は釘や針金、ワイヤーロープなどに。

 ●厚板は船や橋、ビルなどに

 ●薄板は自動車や冷蔵庫、建築資材などに

 ●鋼管は水道管やガス管、街灯の柱などに