な行・は行


長尾

●高殿屋根上部から、屋根を保持するため放射状に出す木。■山取りは、目通り2尺回りから3尺回り。長さ七尋(ひろ)で75本。 ※1尋は6尺(約1.8m)

 

仲間持寄り入札

●大阪でお互いに手持過不足の鉄を、問屋・仲買人が数店集まり売買すること。

 

成捨

●村下・大工など雇用するとき、一定期間(5〜10年)誠実に勤務することを条件に金を貸す(多くて35両)が、その期間中無事に務めると貸金の返済を免除する制度。手代にも同義の制度があった。

 

並洗

●採取した砂鉄の純度が50〜60%とまだ砂の混入の多い砂鉄。純度の高いのは真洗。

 

平し米(ならしまい)

●抱子養米として鑪打込の村の産米を、毎年定まった石数だけ買入契約すること。

 

難波船手当

●難波船による鉄の損失は毎年数件あったが、江戸回鉄では鉄一駄につき正銀2匁ずつ、破舟・沈舟の手当てとして積み立てた。難波の浜では海からの回収荷物「荷打浦方改」の費用がかかる。


に、ね、の

に)

庭払

●鉄問屋・仲買人の店頭で鉄類を売ることをさす。

 

二割土

●元釜をつくるに用いる極良質の釜土。

 

庭渡し

●大鍛冶の仕業を11吹以上すれば、増賃を当日または翌日現金で渡すこと。慶応元年には、増座に繰入れて、必要に応じ支出することにしたが、実質は明治になっても庭渡しが多かった。

 

人別出職放手形

●他領鉄山へ出職するとき、在所の庄屋から、諸法度節目の者でないこと、ころびもの(キリシタン改宗)でないこと、宗旨は何寺・何宗で当方除籍したので、そちらで加籍願う旨の通達。

※宗門受取手形/放手形により当方根帳に加える旨の庄屋からの返答書。

 

ね)

根帳 

●村方根帳。正しくは宗門根帳。村方人別を宗門別に記載するので村方戸籍の原簿となる。■根帳を持つ者が鉄山に出職して事故死すれば、在方の支配をうける。

 

の)

為登鉄(のぼせてつ)

●大阪鉄市場に出荷する鉄類。

 

延米

●鉄山の養米などを、地蔵に入れる前に払出し、後は、手形で決済すること。


灰すらし

●本床の甲と小舟の甲に盛りあげた木が火になったのを、両方の焼口へずらし込んで平らにする。

 

灰番(灰をつける)

●爐床となる下灰は、丸樋形に平めるが、その中央部の深さを定めること。一番は人指指の幅 二番は人差指と中高指を合わせた幅 三番は人差指と中高指と無名指を合わせた幅。

 

はがね(鋼)

●刃・刃金・剣・釼。

 

鋼押・鉧押(けらおし)

●砂鉄より直接鋼を製造する方法。操業は三昼夜。原料は真砂砂鉄。炉の高さを銑押より低くして木呂の勾配を急とする。

 

鋼箱

●鋼は木箱に入れ、菰包に縄をかけ出荷する。近藤家では明治10年、正味12貫目(一束)に統一。

 

羽口

●大鍛冶左下場・本場で、吹差鞴から出る風を火床に送る二尺ほどの粘土管。

 

白銑

●銑鉄はすべて白銑。大部分は錬鉄の原料とするが、昔は一部を鋳物用に出荷。銑鉄は熱度の低いため、全部白銑鉄となり、鼠色銑は出来ない。赤目白銑と真砂白銑とがある。

 

博奕(ばくち)

●賭け事、ギャンブル。■さいころ、鍛冶屋かど(門)での縄くじ、子供の一文講、なんご宝引(握った一文銭の個数をあてる)など山内で盛行。鉄山師は博奕宿は50文、参加者は20文の科料としたが止められなかった。■博奕に負けて缺落人への貸銀を払わせる。

 

走り・砂走り

●鉄穴(崩し場)から沈殿地までの濁流水路。短くて数町、長いのは一里。この間に土砂は粉砕され砂鉄が分離する。

 

初銑

●吹立(操業)当日、竃の小平(短側面)の下口(熔銑・鉱滓の流出口)より出る鉱滓を取り除けて初銑を吸上げて冷却し、金屋子神に供える。

 

蜂目銑

●爐の調子不良のとき蜂目銑となる。氷目銑より歩留りがよく、割鉄の証合もよい。

 

はね米

●郡内貢米の願人が少なく、残米となったとき、郡在役人の協議で村方、酒造家、鉄山に強制割当で買取らせる米。経営不振の鉄山師より、度々免除願いが出されている。■値段は願米価格より高いので間損が出る。

 

浜小鉄

●海岸部で採取する砂鉄。■江戸期より淀江以東、弓ヶ浜海岸部で採取。■明治中期も近藤家では、溝口の福岡山、江府の城の段山で使用。■石州の職人は銑に吹き涌かすことが上手。釼(鋼)はない。涌く鉄は細工に用いるには遣いよい。

 

はんきり車

●はんきり(馬桶)のような車輪の車。

 

番子

●天秤吹子を左右交番に踏み風を送る者。■六人を定員とするが支のあるときは山子その他の職人をあてる。■番子頭は番子庄屋。番子賃に上・中・下がある。■二つ吹(小天秤)は六人、四つ吹(大天秤)は12人。釜塗もする。操業中鑪職人の起し役。※交互に作業するところから「代わり番子」の語源となった。

 

番子頭(番子庄屋)

●その役目は、乾かしてある小鉄が干上ったとき鑪内へ運ぶ。どんぶり場の銑を拾い、村下に渡す。釜塗の日はどんぶりを止め据風呂をわかすなど。

 

番所

●他領に通じる街道の国境に設けられ、人別出人、抜荷の監視にあたる。


引当物

●先銀を渡すときの抵当物件。

 

一代(ひとよ)

●たたらで、ひと区切の操業期間をさす。鋼押は三昼夜、銑押は四昼夜を一代とする。●また別に、山林の生木量の推計単位で、大炭2千貫目生産見込を一代とする。

 

陽山

●南向のよく日の当る山。

 

火鋼

●鉧を自然冷却させて取り出した鋼で、千草鋼とも称し、白くして光沢があり、刀剣、刃物の刃先に用い、日野郡ではこれを好む。破断面は白く金属光を放つ。※鉄池で急冷したものは「水鋼」という。

 

日待

●鉄山では正月・五月・九月に日待御祈祷をして鉄山の安全を祈る。■新高殿釜塗日の夜は、日待御祈祷のため、山内中高殿に職人をはじめ、山内職人を呼集め酒を飲ませる。■本小屋には祝客として村方の主だった者を招き、山奉行・郡役人へは祝儀を出す。鍛冶屋へは供の肴・酒樽の外に酒二升、豆腐10丁、小肴を与え、大工・左下他の鍛冶職人、小炭焼に祝儀を出す。馬士が来れば祝酒、または銀二匁出す。山配・村下へは酒五合、他の職人・山子・小炭焼へ酒二合与える。■明治41年、多里新屋山(近藤家鉄山)では手子頭を通じて33人に祝金。■当日前後は、手子など西比田金屋子神社詣などで浮足だち、仕業に差支えた。■当日鍛冶屋は休日。


不印

●需要が衰えて、捌方が思わしくないこと。

 

吹差・吹指

●本場に大鞴を据付け、火窪に地鉄八貫目を積み、小炭を盛り鞴で鉄を焼く。その鞴を操作する者二人を吹差という。■鍛冶屋の吹子は、大工座に後鞴と前鞴の二挺、左下場に一挺。後鞴は定まった職人。前鞴は定まった職人と、手の空いている手子とで吹く。朝方鍛冶職人を起して回るのは前鞴職人。

 

吹き

●大鍛冶錬金作業の単位。一工程約一時間を一吹と称し、1日8〜10吹。

 

福岡山鉄山・福岡製鉄場

●溝口町福岡に、明治21年開業した近藤家鉄山。■鑪も備えたが、鍛冶部門は合理化のため汽鎚(蒸気機関)を備え、大正期は全鉄山錬鉄の80%を占める。「大正7年、製出高64万t、純益は6万円余。大正8年講和により鉄価暴落、白銑鉄370円余の品、120〜130円となる(手代細木仲三郎手記)」。■人別は鍛工監督一人、大工7、大工見習い2、左下8、汽罐見習1、ハンマー使い4、ケートル焚1、手子13、山配1、村下4、山子37、鋼造1、小炭焼11、大炭焚1、小銑洗1、小回(雑用係り)3、薪係1、炭焚夫1、鍛工小回り。

 

歩鉧(ぶげら) 

●鉧の中でも銑分や多少の雑挟物を含む下等の鋼で商品とならず、大鍛冶地鉄とする。

 

ふづくり

●身分は雇用主に属するが、事情あって借金を完済して何年かの暇をとり、他の鉄山へ出稼すること。相互の鉄山で、合意書を交換する。

 

歩溜り

●地鉄の何割が割鉄製品となるかの歩合で六割二分五厘が目標とされた。


火内・火宇内

●高殿真上の通風孔。火が入れば、本古屋からも消火の手伝いに行く。

 

火窪(ほくぼ)・火久保

●地鉄を錬金のため熱し脱炭する火床。

 

火立(ほたて)

●爐底部の両側が漸次熔融して広くなるので、両側中央部の穴を閉じて二個の流出口を開く。操業二日目の作業で、火立の日と称する。

 

程穴・火戸穴・保土穴・風穴

●爐の長側面に相対する20箇内外の木(気)呂の上にある爐壁を貫通する送風孔。程穴より爐中を見て砂鉄の溶融度で吹方を加減する。

 

程突

●程穴から竃中の模様をみて、棒を入れて突き、加減する。

 

程土・火戸土

●木呂と程穴の接続するところを掩う土。

 

洞(ほら) 

●鉄穴場で山の側面を掘った穴、またその跡地。崩れた土砂の下敷きになることを、「ほらに打たれる」と称する。

 

法螺貝

●扶持米、塩味噌などの支給日に、集合時間を知らせるのに使用。竹を細工して法螺貝の代用とした。

 

本床

●たたらの炉を設置する一帯。■床場は横三尋(ひろ)半、縦七尋、深さ一丈位、水が出れば一丈六尺余り掘る。本床の長さ三尋半、小舟も同じ、床の深さは土居の上まで五尺三寸、本床の底幅三尺二寸あれば小舟は半分の一尺六寸。■本床は小石をまじえて土を練り、塀の如く四尺塗上げ、次に木を積上げ、上は蒲鉾形に元釜土で甲をかけ火を燃やす。木が灰になると、また数回やくが、これを「床を焼く」と言う。小舟も同じく木を込めて焼く。新床を焼く木は三万貫目。

 

本場

●大鍛冶錬鉄場。火窪の爐床の下部に溝?をつくり地下水を出す。その上に木炭粉を詰め、横の一方より粘土で造った羽口を据えて送風器をつなぐ。以前は木製鞴、明治24年頃より水車運転吹子。